職場の鍵を失くしてしまうと補償の義務がある?

IT関連会社に勤めて5年経った。私の仕事ぶりは社長にも評価され、男女雇用年数関係なく昇進できる会社なので同期の中で一番早く課長になることができた。社長に同伴して社外に出かけることもよくあり、自分なりに人脈を増やして行ったので、とうとう他の会社からヘッドハントの依頼を受けた。よくよく話を聞いてみると、様々な面で条件がよかったので、思い切って転職することにした。それまで勤めていた会社の社長や上司、同僚や部下たちから反感を買うかもしれないと思ったけれど、予想外にみんな私の船出を祝ってくれた。本当にありがたい気持ちでいっぱいだったのだけど…。

会社を辞める間際になって、私は会社から渡されていた職場の鍵を無くしてしまっていることに気づいた。それは職場に出入りするためのドアの鍵で、私はあまり使うことがなかったため鍵付きの引き出しにしまっておいたのだけど、退職を前に返還しようと探したところ、無くなっていることに気づいたのだ。私は真っ青になって、机やカバンの中を探し回った。だけどどんなに探しても見つかることはなかった。

弁償も覚悟で総務課長にそのことを申し出ると、なんと弁償金が300万円かかると言われた。どうしてそんなに?と思ったけれど、その鍵は社内の人間がみんな持っているものなので、300人分全ての鍵を替えなくてはならないのだそうだ。だけど本当にそんなにかかるのだろうか。そもそも、職場の鍵を無くしてしまうと補償の義務はあるんだろうか。だいたい机の合鍵は総務にもあるはずだから、盗もうと思えば盗めるものでもある。

私の中で疑惑が膨らんでいった。船出を祝ってくれて嬉しかったけれど、あれは本当だったんだろうか。もしかしたら私のことを会社の裏切り者と思う人間がいたっておかしくない。

300万、払おうと思えば払えない額ではないけれど、退職を前に人間不信に陥り、私はどん底に突き落とされたのである。